Adobe Digital Publishing Solution(DPS)を出版社が活用した事例

2015年8月27日、JEPA(日本電子出版協会)主催のセミナー「NHK出版のEPUB電子出版戦略」に参加しました。

NHK出版の単行本「みんなの楽しい英文法」を、EPUB電子書籍化し、さらに「Adobe Digital Publishing Solution(DPS)」を活用してアプリ化したという事例紹介でした。

前身の「Digital Publishing Suite」では、InDesignで作られた企業の営業ツールをタブレット向けにアプリ化する、といった使い道が多かったように見えましたが、「Suite」から衣替えした新版「Solution」では、

  • Make(アプリ制作)
  • Manage(配信・管理)
  • Measure(計測・アナリティクス)
  • Monetize(マネタイズ)

と、クリエイティブとマーケティングの融合を強化したとのこと。

今回の事例は、InDesign組版データからDPSでアプリを作るのではなく、EPUB電子書籍用のHTMLをベースにし…、

  • 音声の再生
  • アニメーションの再生
  • タップによる文字表示
  • 入力文字の正誤判定
  • 判定結果の保持

といったインタラクションをDPSで追加実装したとのことで、上の4つのMのうち「Make」主体のプロジェクトだったようです。個人的には、DL本数ぐらいしか数字の取れない通常の電子書籍販売に対して、コンテンツのPDCAに使えるであろうアナリティクス機能に注目していたのですが、そちらへの言及がなかったのは残念でした。

さて、語学教材系の電子書籍には、リスニングや発音練習など音声再生を伴う機能が必須だろうと思います。ですが、現状のEPUB3の場合、音声再生機能の実装自体は可能なものの、再生できるかどうかはリーディングシステムあるいはデバイス環境に依存せざるをえません。したがって、テキストと音声が連動するインタラクションを確実に実装するのなら、アプリ化するのが一番という結論になります。その点で、紙本なりEPUB電子書籍のデータを素材として、比較的少ない工数でアプリに展開できるというDPSは有効なソリューションかもと思っていました。

ですが、やはりそれなりに開発工数はかかるようで。ディレクター・デザイナー・エンジニア・コーダーによるチーム編成で、開発に5ヶ月を要したとのこと。初めての試みというオーバーロード分を割り引いたとしてもかなりの工数で、実験的プロジェクトならさておき、これで実際に採算ラインを確保すべしとなるとなかなかにハードルが高いな、とため息…。

(Photo by William Iven. Under the licence of Creative Commons CC0)


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